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朝日新聞6月16日(月)号
今が旬の鮎の出荷風景
「紀州仕立て鮎」のブランドの成長
水へのこだわり・レシピ・鮎トリビア等など
 
                                
週刊 食べある紀の国

アユ 紀の川市
2008年06月16日
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ごちそうになったアユ料理。塩焼きやご飯、寿司など、どれも風味豊かだった=かつらぎ町高田

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氷締めした「紀州仕立て鮎」は大きさごとに仕分けて出荷する=紀の川市上田井の村田水産

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研いだ米と分量通りの水、千切りにしたニンジン、焼いたアユ、しょうゆを炊飯器に入れて炊く

●○清流が育む初夏の味○●

 アユ釣りが解禁され、各地の河川は釣り人たちでにぎわっている。骨が軟らかい今の時期、塩焼きして腹からかぶりつけば、独特の香りとともに上品な白身と苦みがあるはらわたも味わえる。初夏の味を楽しみたくて県を代表する産地を訪ねた。(加藤順子)

 

◆水を選び天然仕立て

 豊富な水量に恵まれている紀の川ではアユがたくましく育つという。しなる竿(さお)を通して伝わる引きはほかの所のものより強く、魅力的だそうだ。そしてこの川を知り尽くし、もり立てているのが「紀ノ川漁協」だ。組合員525人。漁業権は奈良県境から和歌山市に及ぶ。

 組合専務理事の井上博紀さん(70)によると毎年、5~6センチに育てた稚アユ1トン余りを放流している。ここ数年は放流直後のカワウの「食害」に悩まされてきたが猟友会の銃による駆除などが奏功。漁獲高は安定し、年間1千人を超える釣り人も楽しませているという。

 県産アユは天然、養殖が県内外に年間1100トン以上出荷されている。大半は養殖だ。管理に手間がかかるなどで全国的に減る傾向にあるが、県産は微減。その結果、05年から隣の徳島県を抜いて日本一に。背景には、スイカのような独特の香りを持つ天然物に近づけるため、伏流水や地下水を使い自然に近い状態で育てた「紀州仕立て鮎(あゆ)」のブランド化がある。

 紀の川市上田井、「村田水産」の村田武史さん(28)は数少ない20代の後継者だ。死去した父の後を継ぎ、13メートル四方ほどの池ではポンプで自然に近い水流で育てている。大雨だと食べるえさの量が減り、気温が低いと動きが鈍る。手間がかかるだけにいとおしいそうだ。より鮮度の良い状態でと冷凍ではなく氷締めで送り出している。「環境に敏感な生き物。安心して食べてほしいから」と村田さん。

◆「素焼き」で香ばしさ

 アユは地元でどのように食べられているのだろう。漁師歴40年以上のベテランで紀ノ川漁協理事を務める小西誓也さん(61)宅で、妻敏さん(60)の手料理をいただいた。

 誓也さんは漁が解禁になるとほぼ毎日、アユを追い、釣果は食卓を飾る。今年は雨が多く、増水が続いて芳しくないそうだが、冷凍保存していた天然物と養殖物で、塩焼き、甘露煮、アユ寿司(ず・し)、アユ飯、珍味うるかの5品が並べられた。

 「とにかく塩焼きを」と促されて腹にかぶりついた。パリっとした皮の下の身に歯が届くと柔らかな食感、塩加減もほどよく上品な味だ。あっという間に完食した。次はアユ飯。敏さんが炊飯器を開けると香ばしさが部屋に広がった。一緒に炊いたアユだけ取り出し、頭と骨を除いて炊飯器に戻して混ぜる。心配したはらわたの苦みは米の甘さに包まれていた。幸せー。

 敏さんによると地元での基本は「素焼き」という。一手間だが香ばしさが増し、くさみもなくなる。酒とみりん、しょうゆなどで3~4時間煮れば甘露煮に。郷土料理のアユ寿司は、これを押し寿司にしたものだ。敬遠される骨も気にならない。最後はとっておきの「うるか」。はらわたを田舎みそと混ぜて煮詰める。砂糖とすり下ろしたしょうがで味を整えるのが小西流だ。「つい酒が進んでしまう」と誓也さん。目尻の下がった表情は優しかった。

●レシピ アユ飯●

 〈材料4~5人分〉米3合、アユ3匹、ニンジン3分の1本、
          しょうゆ大さじ3杯程度、ミツバ(適量)

 (1)アユを魚焼きグリルで素焼きする。焦がさないよう、時々ひっくり返す

 (2)研いだ米と分量通りの水、千切りにしたニンジン、焼いたアユ、しょうゆを炊飯器に入れて炊く

 (3)炊き上がったらアユを取り出して頭と骨を取り除く。ほぐした身だけを炊飯器に戻して混ぜる

 (4)好みでミツバを散らす

 

●●ごちそうさま●●

紀州ブランド成長

 すらりとした姿や香り、上品な味などが楽しめた。酒は飲めないが、初めて食べたうるかは「日本酒がほしいかも」と思わせる逸品だった。

 海魚に比べて出荷量は多くないが、「紀州仕立て鮎」のブランドが成長しているのを実感した。一方で船場吉兆の使い回しが明らかになっただけに、「印象が悪くなる」と漁協、料理関係者らが発した声は察するものがあった。

 ぜひ今度は、釣れたばかりの天然物を直火で焼いて、思い切りかぶりついてみたい。

 (東京都出身 27歳)

●貴志川観光物産センター(紀の川市貴志川町前田135の1)

 地元農家が出荷した野菜や加工品などを販売している。アユ寿司(970円)は年間を通しての人気商品という。営業は午前8時半~午後5時半。年末年始が定休。電話0736・64・8787

 

 

●●あります アユ寿司●●

・まる乕(とら)本店(同市粉河1797)

 伝統を守る4代目、畑和成さん(44)が作るアユ寿司(1300円)が人気。持ち帰りも出来る。営業は午前9時~午後7時半。月曜定休。電話0736・73・2046

・なかむらの柿の葉すし本舗(同市粉河73)

 アユ寿司(1050円)や地元で「じゃこ」と呼ぶ川魚の柿の葉寿司(6個815円)を販売している。営業は午前10時~午後5時。火曜定休。電話0120・08・2621

◆◆トリビア◆◆

「香魚」「年魚」とも

 「将来を占うための儀式で釣れた魚から」「戦況や農作物の出来を占ったから」……など名前の由来には諸説あり、古事記や日本書紀にも出てくる。岩についた藻をはみ、スイカのようなにおいがすることで「香魚」、1年しか生きないことによる「年魚」とも呼ぶ。中国で「鮎」はナマズをさす。

 秋には川を下って産卵、稚魚は一時的に海で過ごし、翌春から川を遡上(そじょう)する「両側(りょうそく)回遊」をみせる。縄張りをつくる習性があり、他のアユが入ってくると体当たりなど攻撃する。この性質を利用して囮(おとり)鮎を使うのが「友釣り」だ。

 琵琶湖で一生を終える陸封(りくふう)アユは、栄養分の低い動物性プランクトンなどを食べ、大きく育たない。

◆◆メモ◆◆

 紀の川でのアユ釣りには、紀ノ川漁協発行の遊漁券(1日3150円、1年1万500円、電話0736・66・9111)が必要。友釣り専用区域は約10カ所で、人気がある竜門友釣専用区へはJR和歌山線粉河駅下車。

●●プレゼント●●

 アユ(7~8匹)を抽選で5名様にプレゼントします。はがきに住所、氏名、年齢、電話番号、この1週間の和歌山版でよかった記事や評価できなかった記事の感想などをお書きいただき、〒640・8156 和歌山市七番丁17、朝日新聞和歌山総局「食べある紀の国プレゼント係」へ。23日必着。賞品の発送で当選発表にかえます。

               
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